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長男が小6のとき、出席扱い制度について相談したことがあります。自宅学習の教材を使えば出席扱いにできる場合がある——そう調べて知っていたので、スクールカウンセラーの方に、こういう制度があるらしいのですがと切り出しました。
返ってきたのは、こういう言葉でした。
「そういう制度は、聞いたことがありません」
責めるつもりはありません。当時はまだ、学校現場に十分知られていなかったのだと思います。ですが、手元にあった選択肢が、そこで静かに閉じてしまったのは事実です。
制度は、知っているだけでは足りない。これが、わが家の得た教訓でした。(そのときの経緯は、出席扱いの、その先にある成績評価の話に詳しく書いています。)
それから月日が流れ、長男が中2になったころ、また別の壁にぶつかりました。学校の対応にどうしても納得がいかないことがあり、悩んでいたときに助けてくれたのは、学校ではなく、同じ支部に所属する保護者のつながりで知り合った方でした。私立中を自主退学したお子さんを持つその方に、LINEで相談に乗ってもらう中で、初めて「合理的配慮」という言葉を教えてもらったのです。
制度も、言葉そのものも、学校から教えられるのではなく、同じ経験をした保護者どうしのつながりから知らされる。そういうことが、今の学校現場にはまだ少なくないのだと思います。
同じような経験をされた方は、少なくないのではないでしょうか。板書が写しきれない、教室の音や光がつらい、決まった時間に登校するのが難しい——お子さんの困りごとに気づいていても、「これって特別扱いをお願いすることになるのかな」「わがままだと思われないかな」と、伝える前にためらってしまう方もいらっしゃると思います。
この記事では、2024年4月から制度としてどう変わったのか、そして学校に伝えるときの具体的な整理の仕方をお伝えします。
合理的配慮とは?2024年4月からすべての学校で「義務」になりました
合理的配慮とは、障害や特性によって生じる社会的なバリアを取り除くために、学校や事業者が個別に対応を工夫することです。
これまでとどう変わったのか
公立学校では、2016年からすでに合理的配慮の提供が義務でした。そして2024年4月の障害者差別解消法の改正により、私立を含むすべての学校・事業者にも義務が広がっています。
つまり、「お願いしてもいいのかな」とためらう段階ではなく、学校側に対応する法的な義務がある、というのが今の制度です。わが家がスクールカウンセラーの方に相談したときのような「聞いたことがありません」という応答は、本来であればもう起きにくいはずの状況になってきています。
どこまでが「合理的」な範囲なのか
合理的配慮には、学校の体制や財政状況を踏まえて「負担が重すぎない範囲で」という前提があります。すべての要望が無条件に通るわけではなく、学校と相談しながら、実現できる形をすり合わせていくものだと考えていただくとよいと思います。
「困りごと→原因→してほしいこと」で整理すると伝わりやすい
具体的な依頼がないと学校も判断しづらい
「配慮してください」とだけ伝えても、学校側は何をどう対応すればよいか判断しづらいものです。お子さんの特性は一人ひとり違うため、困りごとの背景まで言葉にして伝えることが、結果として近道になります。
メモにまとめておくと安心
面談の前に、次の3点をメモにしておくと、当日慌てずに伝えられます。
- 困りごと(いつ、どんな場面で困っているか)
- 考えられる原因(特性や感覚の傾向など)
- 家庭で試して効果があった対策
たとえば「ノートを書き写すのが間に合わない」という困りごとの背景に「視線の移動が苦手」という特性があるなら、「タブレットで板書を撮影させてほしい」という具体的な依頼につながります。
配慮の具体例 こんなお願いの仕方があります
授業・板書に関する配慮
板書を写しきれない場合、タブレットでの撮影を許可してもらう、あらかじめプリントを配ってもらう、といった対応があります。
感覚・環境に関する配慮
音や光に敏感なお子さんには、イヤーマフの使用を認めてもらう、座席を窓や廊下から離してもらう、といった工夫が考えられます。
登校のリズムに関する配慮
決まった時間の登校が難しい場合には、時間をずらしての登校や、別室での学習を相談する、という選択肢もあります。
以前、転校先の教頭先生からこんな例を聞いたことがあります。人がたくさんいる教室に疲れてしまった子が、空いている隣の教室で遊ぶのではなく、そこで学習して過ごしている、という例です。「遊ばせる」のではなく「学習できる場所を用意する」という発想に、心が軽くなったのを覚えています。教室に居続けることだけが正解ではなく、疲れた子どもが安心して過ごせる場所を用意することも、立派な配慮のひとつなのだと思います。(このときの転校の経緯は、【転校で不登校は改善したか】小学6年2学期に転校した結果に書きました。)
学校への伝え方
誰に、どのタイミングで伝えるか
担任の先生に加えて、学校に特別支援コーディネーターが配置されている場合は、そちらも窓口になります。スクールカウンセラーが窓口になる学校もありますが、学校によっては配置されていないこともあります(【体験談】私立中にスクールカウンセラーがいない|親が相談した5つの窓口)。学期はじめの面談や、困りごとが出てきたタイミングなど、早めに伝えるほど、学校側も準備の時間を取りやすくなります。
伝える際に意識したいこと
一方的な要求として伝えるのではなく、「学校と一緒に、できる形を探したい」という姿勢で臨むと、話し合いが進みやすくなります。もし窓口の先生に理解してもらえなかった場合も、それで終わりにする必要はありません。管理職の先生や、市区町村の教育委員会に相談するという手段も残されています。わが家がそのことを知らなかったのは、後から振り返って惜しかったと感じている点です。
お願いすることは、子どもの学ぶ権利を守ること
合理的配慮をお願いすることは、特別扱いを求めることではなく、お子さんが学ぶ権利を守るための、当然の一歩です。
制度は、2024年の改正であらためて「義務」だと明文化されました。差し出せる根拠が、以前よりはっきりと手元にあります。
まずは、お子さんの困りごとをメモに書き出すところから始めてみませんか。
参考・出典
内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」:https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html
内閣府リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」:https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html
文部科学省「障害に配慮した教育」:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/mext_00800.html
