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「そういう制度は、聞いたことがありません」
長男が小6のときの通知表を、以前このブログで公開しました。体育の「よい」に○が2つ。あとは、すべて斜線でした。
先にお伝えしておきます。わが家は、出席扱い制度を利用していません。
知らなかったわけではないのです。「すらら」のような教材で自宅学習をすれば出席扱いになる場合がある——そのことは、当時すでに調べて知っていました。
ですから、相談もしました。スクールカウンセラーの方に、こういう制度があるらしいのですがと切り出したのです。返ってきたのは、こういう言葉でした。
「そういう制度は、聞いたことがありません」
責めるつもりはありません。当時はまだ、学校現場に十分知られていなかったのだと思います。ですが、あのとき手元にあった選択肢が、そこで静かに閉じたのは事実です。結局わが家は、斜線だらけの通知表をそのまま出願書類に添えました。
制度は、知っているだけでは足りない。 これが、わが家の得た教訓です。
そして今、状況は少しずつ変わってきています。2024年8月、文部科学省が法令を改正しました。
欠席中に子どもが行った学習の成果を、学校の判断で成績評価に考慮できる。
さらに2026年4月には、この内容をまとめた保護者向けのリーフレットが公開されました。紙になった、ということが大きいのです。 「聞いたことがありません」と言われたとき、差し出せるものがある。わが家にはなかったものです。
出席扱いの仕組みそのものは前回の記事にまとめました。今日はその先の話——「出席にはなった。では、成績はどうなるのだろう」という段階のことをお伝えします。
「出席日数」と「成績」は、別々の話です
まず押さえておきたいことがあります。出席扱いが認められても、評定が自動的につくわけではありません。
ここでつまずく方は、とても多いようです。手続きが通ったのだから、当然評価もされるはず——そう思ってしまうのは無理もないと思います。ですが、指導要領のうえで、この2つは別の欄です。判断も別々に行われます。
なぜ分かれているのでしょうか。出欠は「その日、学びの場にいたかどうか」の記録です。一方で評定は、「何をどこまで身につけたか」という中身の判断になります。学校としては、中身が見えなければ数字をつけられない。そういう理屈なのですね。
裏を返せば、中身が見える状態にできれば、評価してもらえる可能性があるということでもあります。
2024年の法令改正で変わったこと
そしてここが大切な点です。2024年(令和6年)8月29日、文部科学省は「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について」という通知を出しました。
この改正で明確化されたのは、次の一点です。不登校の子どもの成績評価を行う際、学校の判断で、欠席中に行った学習の成果を考慮できる。
対象は、小学校・中学校・義務教育学校などに在籍する不登校の子どもです。教育支援センターやフリースクールでの学習も、自宅でのICT学習も、含まれます。
「学校の判断で」という部分が引っかかる方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、自動的に評価される仕組みではありません。ですが、以前は「そもそも評価してよいのか」という段階で止まっていた話が、「考慮できます」と国が明文化したところまで進んだ。これは小さくない変化だと思います。
さらに2026年4月には、文部科学省が出席扱いと成績評価をセットで解説した保護者向けリーフレットを公開しました。制度が変わったことを、学校側も保護者側も知らないままだった——その状態を動かすための資料です。
その「評定」は、どう内申点になるのか
ここで、少し先の話をさせてください。中学生のお子さんをお持ちの方には、避けて通れない話だからです。
通知表につく評定は、そのまま内申点として高校入試に持ち込まれます。ただ、この計算方法が都道府県によってまるで違うのです。ここを知らないまま中3を迎えて、慌てる家庭は少なくありません。
まずは共通の土台から
どの都道府県でも、出発点は同じです。9教科(国語・社会・数学・理科・英語+音楽・美術・保健体育・技術家庭)を、それぞれ5段階で評定する。 すべて5なら 9×5=45点。これが「素内申」と呼ばれる、1学年分の満点です。
違ってくるのは、ここから先です。
- 東京都:中3の成績のみ。実技4教科を2倍で換算
- 神奈川県:中2と中3が対象で、中3を2倍
- 埼玉県:中1〜中3すべてが対象
- 大阪府:中1・中2・中3を 1:1:3 の比率で
「中3だけ」の県もあれば、「中1から全部」の県もある。この差は、不登校の家庭にとっては小さくありません。
北海道の場合——中1から、すべて入ります
わが家のいる北海道は、後者です。計算式はこうなっています。
(中1の9教科合計 × 2)+(中2の9教科合計 × 2)+(中3の9教科合計 × 3)
満点は 45×2+45×2+45×3=315点です。
そしてこの315点を20点刻みで区切り、**AからMまでの13段階の「内申ランク」**に振り分けます。Aランクが296〜315点、Bが276〜295点、と続いていく形です。
お気づきでしょうか。北海道では、中1の1学期から入試が始まっているのです。
初めてこの計算式を見たとき、正直なところ、少し息が詰まりました。中1で学校に行けなかった時期が、そのまま3年後の数字に残る。そういう仕組みなのですから。
ですが、だからこそ、と思い直したのです。評定をつけてもらえるかどうかは、早い段階から動く価値がある。 中3になってから慌てるより、中1・中2のうちに学校と話しておく。北海道のような方式の地域では、その差が315点満点のなかで効いてきます。
なお、ここに書いたのは2026年7月時点の情報です。入試制度は変わります。お住まいの都道府県の教育委員会が出している最新の実施要項を、必ずご確認ください。不登校の生徒への配慮措置を設けている自治体もありますので、その点も併せて調べておかれるとよいと思います。
成績をつけてもらうために、家庭で用意できるもの
内申点の仕組みが分かると、「では評定をつけてもらうために何をすればいいのか」が次の問いになります。ポイントは3つです。
① 教育課程に沿った学習内容であること
成績評価の要件として示されているのは、学習の計画や内容が、在籍校の教育課程に照らして適切であることです。
つまり、学年や単元がはっきりひもづいている教材のほうが、学校は判断しやすくなります。子どもが好きな動画や本で学んだことも尊い学びですが、評定という枠のなかでは、教科書の単元と対応づけられる形が扱いやすいのが実情です。
無学年式の教材であれば、つまずいた学年まで戻りつつ、記録上はどの単元に取り組んだかが残ります。学び直しと記録を両立させたい場合には、相性のよい形かもしれません。「戻ってやり直すところから始めたい」——そんなお子さんに。
② 「何がどこまでできたか」を示せること
学習時間の記録だけでは、評定の材料としては少し弱いところがあります。加えたいのは、到達度が分かるものです。
単元テストの結果、正答率、どこでつまずいて、どう乗り越えたか。こうした情報があると、先生は「この子はこの単元を理解している」と判断しやすくなります。
一人で解いていると、この「説明できる状態」まで持っていくのが難しいこともあります。誰かが横で見ていて、理解度を言葉にしてくれる環境があると、記録の質は変わってきます。不登校の子どもを専門にしているサービスなら、学校提出用の記録の形式まで相談できる場合もあります。 「一人だと、どこまで理解できたのか説明しづらい」——そんなご家庭に。
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③ 担任への渡し方
まとめて学期末に出すよりも、学期の途中で一度、区切りで一度というリズムをおすすめします。
学期末は先生方が最も忙しい時期です。その段階で初めて資料が届いても、検討する時間がありません。早めに渡しておけば、「この形で足りますか」と確認する余裕も生まれます。
評定がつかなかったとしても
ここまでお伝えしたうえで、正直に添えておきたいことがあります。
学校によって、判断は分かれます。 冒頭でお伝えしたとおり、わが家は「そういう制度は聞いたことがない」と言われて終わりました。制度上は可能でも、前例のない学校では慎重になることがあります。それはお子さんの努力が足りなかったからではありません。
もし同じように断られたら、担任の先生や管理職にも相談してみてください。 スクールカウンセラーの方が制度に詳しいとは限らないからです。それでも進まないときは、市区町村の教育委員会に問い合わせるという手もあります。わが家が知らなかった一段です。
そして、内申点に頼らない進路も確かにあります。 学力試験の比重が高い私立や、通信制・単位制の高校がそうです。
わが家の長男は、斜線だらけの通知表のまま私立中高一貫校に合格しました。ですがその後、自主退学しています。公立中学を経て、今は通信制高校にいます。決して順調な道のりではありませんでした。それでも、その学校で彼は「やりたいこと」を見つけました。
通知表の紙一枚では、この先は決まりません。少なくともわが家では、決まりませんでした。
もうひとつだけ。通知表の話を、子どもの前でしすぎないこと。 斜線の並んだ紙を一番気にしているのは、たいてい子ども自身です。親が数字に一喜一憂する姿は、思っている以上に伝わってしまいます。
数字の外にある学びを、記録に残す
成績評価の仕組みは、子どもを評価の土俵に引き戻すためのものではありません。学校に行けない時間のなかで積み上げたものを、「なかったこと」にしないための仕組みです。
出席日数を確保したその先に、評定という次の段があります。段を上るかどうかは、お子さんの状態次第でかまいません。今は休むことが最優先という時期なら、この記事のことはいったん忘れてしまってください。
わが家は、制度を知っていながら使えませんでした。「聞いたことがありません」の一言で、話がそこで止まってしまったからです。斜線の並んだ通知表を、ただそのまま受け取るしかありませんでした。
今は、差し出せる紙があります。 文部科学省がリーフレットを作り、法令も改正されました。同じ言葉を返されたとしても、「こちらに書いてあるのですが」と続けられる。それが、この数年で変わったことです。
お子さんが今日、少しでも机に向かえたなら。それはもう、記録に値する一日ではないでしょうか。

参考・出典
- 文部科学省「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について(通知)」令和6年8月29日:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155_00002.htm
- 文部科学省「不登校児童生徒の出席扱い・成績評価について」リーフレット(2026年4月):https://www.mext.go.jp/content/20260407-mxt_jidou01-000028870-001.pdf
- 文部科学省 出席扱いの取扱いについて:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155_00005.htm
- リセマム「不登校中の学習成果を成績に反映、法令改正を通知…文科省」:https://s.resemom.jp/article/2024/09/03/78688.html
- 北海道の内申ランク計算と一覧:https://sapporo-lilac.com/seminar/naisinrank-hajimete/
- 北海道公立高校入試の仕組み(内申点・当日点・ランク):https://sapporoshingaku.uh-oh.jp/hs-exam-system/
- 都道府県別・内申点計算方法:https://alpha-katekyo.jp/tips/tips286/
